[No.440]「マイ・ガール」/テンプテーションズ('64)

"My Girl"/The Temptations('64)。
何度聴いても楽曲の仕上がりの素晴らしさにため息の出る名曲中の名曲。曲作りの良さとアレンジの巧みさに、ヴォーカル及びコーラスの表現力が加わり見事なまでに構築された、ある意味でポップスの完成形の一つがこれだ。

ベースのみによるイントロに印象的なギターのリフとフィンガーティップスが被さり、あのファンク・ブラザーズ独特のドラムのフィル・イン、そしてヴォーカルが入ってくる。たったそれだけのことだが、この入りのタイミング、少しずつ音数が増えていく呼吸は後のポップ・ミュージックの多くに多大な影響を与えたと思われる。ギターのリフは続くが、もう一つカッティングも加わり、ワン・フレーズ歌ったところからコーラスが入る。さらにピアノ(オルガン?)らしき音もさりげなく増えている。そして、サビに向かう前にホーンが加わり、いよいよサビではストリングスが気分を盛り上げ、”マイ・ガール”を連呼しながらコーラスが音域を上げていき、最後の”マイ・ガール”で一つになる。

2番では、ホーン・セクションが積極的にフレーズを重ねていく。ストリングスもその裏で鳴っている。サビ前のヴォーカルのメロディが "Make Me Feel This Way" の部分で若干変わっているのがいいアクセントになっているそして、サビでは1番とは違うフレーズをストリングスが奏でている。同じことをしないアレンジが素晴らしいのだ。

2番が終わったところでイントロと同じ演奏が戻ってくる辺りは、さすがと唸らせてくれる。おまけにギターのリフにストリングスが被さるなど芸が細かい。そして間奏はストリングスが担当するのだが、そこに "Hey Hey Hey"のコーラスやヴォーカルのファルセットを入れて、単純なソロのみにしないところまでアレンジャーの意志が行き届いている。さらに驚くことには、美しいコード進行はいつの間にかキーを全音上げてしまっているのだ。途中でキーを上げることによってテンションをさらに高める効果もポップス界では定番だ。

3番まで来るとすっかりゴージャスなサウンドにゆったりと身をゆだねて聴いていられる。そしてサビだ。やはりホーン、ストリングスともメロディを変えてくる攻撃は続く。そしてサビの繰り返しでは歌い出しの歌詞を持ってきながら、高揚を隠せないようなメロディで歌わせている。その後ろのストリングスがまたメロディが違うのだ。そして "Talkin'bout Talkin'bout Talkin'bout" の繰り返しで責め立て、永遠に続くかと思わせながらこの時代特有のあっさりヴォリュームを下げてしまうフェイドアウト。あまりの見事さにいつ聴いても感心させられることばかりだ。

楽器が少しずつ増えていったりフレーズを少しずつ変えていったり、途中でムードを変えたりキーを上げたりするポップスのアレンジ見本とも言うべき本作は、1964年にしてすでに誰にも到達できない高みに登り詰めている。だからこそ、「マイ・ガール」から多くのことを学び、ほんの少しでも近づけないかと試行錯誤しながら音楽をつくっていけばよいのだろう。

ゴールド
ユニバーサル インターナショナル
2005-04-21
テンプテーションズ

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