ジャパニーズ・シティ・ポップの名曲?[No.906]

『レコード・コレクターズ7月号』の特集は「シティ・ポップの名曲ベスト100 1980-1989」。アルバムではなく曲単位で,しかもランキング形式。1位が大滝詠一「君は天然色」だったら嫌だなあ,と思いつつページをめくると,1位はその弟子山下達郎「SPARKLE」だった。安心したものの山下達郎の曲の中で「SPARKLE」が1位になるあたりは流石『レコード・コレクターズ』誌。ポップというよりロック寄りだ。しかし,ランクインしているほかの曲のタイトルを見ると,様々な疑問が湧いてきた。

4位の吉田美奈子「頬に夜の灯」は絶妙のミディアム・スローで納得だが,6位「TOWN」はどうだ。完全なヘヴィ・ファンク・ナンバーで,どこがポップなのだ。こんなにも重量級のハードなサウンドをシティ・ポップと呼ぶのか? 

前述の大滝詠一の件だが,シティ・ポップの名盤扱いされている『A LONG VACATION』は,曲によってはあまりにオールディーズ寄りで,シティ感とは一線を画する。「君は天然色」が5位なのだが,この曲にしても基本のフレーズおよびサビの部分はスリー・コードなのだ。こうしたことを考えるとやはり「シティ・ポップ」の定義を明らかにしたくなる。

2002年に『ジャパニーズ・シティ・ポップ』を刊行した木村ユタカの定義は「都市生活者のための都市型ポップス」である。また,「シティ・ポップといえば80年代初頭のジャパニーズAORを思い浮かべる人も多いでしょう」とも述べている。『レコード・コレクターズ増刊 CITY POP シティ・ポップ1973-2019』の巻頭では「70年代の日本で作られるようになった,都会的で洗練されたポップ・ソング。(中略)米英のロックやソウルの動きを敏感に察知する洋楽的なセンスを持ったアーティストたちを差別化する意味で,生まれた言葉/ジャンルと言えるだろう。」と定義されている。これらをもとにキーワードを挙げてみると次のようになる。

「都市の音楽」「AOR」「洗練された」「同時代の洋楽的なセンス」。このキーワードをもとに考えた場合,ロック,ファンク色が強すぎたり,オールディーズすぎたりすると,シティ・ポップの枠から外れていくと考えられる。これまでの日本のポップ・ミュージックに触れてきた私の感覚でいくと,「シティ・ポップ」という言葉や概念はある程度幅の狭いものと捉えたい。特に「洗練された」「AOR」という要素に重点を置きたい。そうすると,ベスト10内で最もシティ・ポップ的な楽曲は,7位松任谷由実「真珠のピアス」となるだろう。

1位が山下達郎,2位が竹内まりや「プラスティック・ラブ」と夫婦でワンツー・フィニッシュはまあ順当なところ。しかし,「AOR」感は薄いものの3位が大貫妙子「色彩都市」という結果はやはり『レコード・コレクターズ』的だった。嬉しい限りである。
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吉田美奈子 LIGHT'N UP [Blu-spec CD2]バージョン 吉田 保リマスタリングシリーズ - 吉田美奈子 ヨシダミナコFOR YOU (フォー・ユー) - 山下達郎, 山下達郎, ALAN O’DAY, 吉田美奈子, 山下達郎
FOR YOU (フォー・ユー) - 山下達郎, 山下達郎, ALAN O’DAY, 吉田美奈子, 山下達郎PEARL PIERCE - 松任谷由実
PEARL PIERCE - 松任谷由実Cliche - 大貫妙子
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この記事へのコメント

偉大なる詐欺師
2020年06月26日 20:42
最近の人種差別抗議の流れか、音楽用語「アーバン」が使用禁止になりそう、と言う話を聞いた。当方認識不足でアーバンは”都会的な”とか”洗練された”的なイメージを持っていたのだが、実は”黒人由来の音楽全般”というざっぱな括りが本来の意味らしい。そんな話を聞いていると”シティ”ポップは良かったなあとしみじみ思った。