スティング 来日公演 MY SONGS[No.877]

台風19号のため,翌日に延期されたスティング公演を観た。ポリス時代からソロまでの代表作を録音し直しした『MY SONGS』と題されたアルバムを引っ提げてのライヴだった。彼のキャリアを総括するような内容だったが,ステージはこれと言ったセットもなく,巨大スクリーンもなく,スティングと若手のメンバーたちがただ演奏するだけというシンプルなものだった。スティング自身もTシャツと至って飾り気のないコスチュームで,ただ演奏を聴いてくれ,と言わんばかりで大げさにしない姿勢は好感が持てた。

ギター2人にキーボード,ドラムス,コーラスが3人。コーラスの1人は曲によってブルース・ハープを演奏する。あとは,スティング自身のヴォーカルとベース。彼はこのバンドスタイルを気に入っているようで,楽し気にプレイしていた。特別に技術が高いミュージシャンを揃えているわけでもなく,テクニックよりはアンサンブルで聴かせようという意図が見えた。スティングのベースの音だけ潰れ気味ではっきりと聴こえなかったのは残念だったが。

「孤独のメッセージ」「イングリッシュ・マン・イン・ニュー・ヨーク」「セット・ゼム・フリー」など正しく代表曲連発で始まったライヴだったが,一番の見せ場は「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」のハイトーン・ヴォーカルだった。高音がよく伸びる。観客との掛け合いもいい。さらにボブ・マーリイ「ゲット・アップ,スタンド・アップ」を途中に挟んだ展開もよし。ポリス時代に巧みにレゲエを取り込んだ彼ならではのステージングだった。

「見つめていたい」で本編が終わったが,アンコールの「ロクサーヌ」は嬉しかった。この曲を歌うスティングが観られたことが単純に嬉しかった。アンコールの最後は「フラジャイル」。ベースをアコースティック・ギターに持ち替えてしっとりと締めくくった。

ライブ全体を通して,彼が書くメロディと独特の声質が日本人の琴線に触れるのだなあ,という印象を改めて持った。次々に繰り出される愁いを帯びた物悲しいメロディ・ラインは日本人の好むところだ。いかにもイギリス人的なマイナー調の旋律は,日本人の短調好きにぴたりと当てはまる。そして,あの歌声が悲し気なメロディをより際立たせる。ポリス時代には,彼の出せる高音域ぎりぎり辺りにわざとキーを設定して,悲しさを印象付けていたスティング。彼の計算は見事な戦略として機能していた。それは今でも十分通用している。彼の歌の魅力を堪能できた来日公演だった。
My Songs - Sting
My Songs - Stingナッシング・ライク・ザ・サン - スティング
ナッシング・ライク・ザ・サン - スティングエヴリ・ムーヴ・ユー・メイク:ザ・スタジオ・レコーディングス(限定ボックス) - ポリス
エヴリ・ムーヴ・ユー・メイク:ザ・スタジオ・レコーディングス(限定ボックス) - ポリス

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この記事へのコメント

偉大なる詐欺師
2019年10月21日 20:16
ラテンやカリブのリズムを巧みに取り入れたどこか”異国”を感じさせる曲調もさることながら「このもの悲しいメロディが日本人の感性に合うんじゃないか」と共にライブに行った相方と丁度会話していたところでした。