ポールの80年代,最初と最後は流石の腕前[No.793]

レコードコレクターズ先月号では,80年代のポール・マッカートニーの不調ぶりが語られ,89年発表の『フラワーズ・イン・ザ・ダート』で一気に巻き返したという論調でそのデラックス・エディションを紹介していた。82年の『タッグ・オブ・ウォー』『フラワーズ・イン・ザ・ダート』の間のアルバムは駄目だったというわけだが,そう言えば,と確かに身に覚えのある話だった。というのも…。

筆者は80年代をもろに学生時代として過ごした。にもかかわらず,80年代のポール・マッカートニーで聴いたことのあるアルバムは,正しく『タッグ・オブ・ウォー』『フラワーズ・イン・ザ・ダート』の2枚しかなかった。『フラワーズ・イン・ザ・ダート』は,エルヴィス・コステロとのジョイントという話題といかにも彼らしいメロディ・ラインに惹かれて聴いていた。一方の『タッグ・オブ・ウォー』は,丁度洋楽を聴き始めたころに元ビートルズポール・マッカートニーが出したソロ・アルバムということで知っていた。「エボニー・アンド・アイボリー」のヒットもあったので反応したのだった。

今改めて聴き返しても,『タッグ・オブ・ウォー』はよくできたアルバムだ。表題曲を聴くだけで傑作の予感がする見事なオープニングだ。「サムバディ・フー・ケアーズ」のスパニッシュ・ギターもいい。スティーヴィー・ワンダーとの共演「ホワッツ・ザット・ユアー・ドゥーイン」は,まるっきりスティーヴィー・ワンダーの曲にポールがゲスト参加したかのような豪快なアプローチ。ジョン・レノンへの追悼歌として知られる「ヒア・トゥデイ」の短さに納得する。

ここまで聴いてみて,やはり本作の成功は,ジョージ・マーティンのプロデュースによるところが大きいことを再確認した。ストリングスやブラス・セクションの使い方,音の録り方の巧みさには舌を巻く。また,カール・パーキンス,スティーヴ・ガット,スティーヴィー・ワンダーなど,多くのゲストを招いてのレコーディングをうまくまとめ上げる手腕は流石だ。曲調も良く言えばヴァラエティに富んでいるが,曲ごとにバラバラなところを統一感をもたせるプロデュース術は正しくプロの仕事だ。

自然消滅したウイングスから脱却し成功を手にしたポールだったが,『フラワーズ・イン・ザ・ダート』での復活までは長かった。その間,一切ポール・マッカートニーの活動に見向きもしなかった理由は自分でも不明だが,同時代の彼の活動よりも他にもっと聴きたいロックが山のようにあったということだろう。

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