山下達郎のアルバム最高作は?[No.790]

またもハード・オフでLPを購入。状態のいい『FOR YOU』を1,000円で手に入れた。評論家,或はファンの間でもいまだに最高傑作扱いされることの多い,山下達郎の代表作である。しかし,以前から本作が最高傑作という意見には疑問を感じていた。本作はかなりいいところまで行っているのだが,いかんせん詰めが甘いというのが私の意見である。では,彼の最高作は? という質問には最後に答えよう。

まず,聴く者誰もが幸せになる「SPARKLE」。あのギター・カッティングこそまさに音楽のマジックだ。続く「MUSIC BOOK」「MORNING GLORY」と快調なのだが,残念ながら途中に半端なインタールードを入れたのがマイナス・ポイント。ほとんど必要感がない。唯一,B面のヘヴィ・ファンク「HEY REPORTER!」の後に入るインタールードで印象を柔らかくして「YOUR EYES」につなげる部分だけは意味を感じる。しかし,ずばり言ってなくても問題ない。

そして,その「HEY REPORTER!」の歌詞がマイナス・ポイントの2つ目だ。竹内まりやとの結婚時におけるメディアの大騒ぎに閉口した体験から書かれたナンバーだ。それ自体は特に問題がない。シンガーソングライターとしての山下達郎を前面に出している。しかし,歌詞は芸能レポーターを揶揄する内容に終始している。相手を攻撃するには,そこにユーモアを加えないとただの愚痴や文句になってしまうのだ。忌野清志郎を思い出せばわかる。彼は特定の相手をこき下ろすような歌を歌うときは,かならずユーモアを忘れなかった。それにより,聴く者をクスリと笑わせつつ,攻撃力はさらに増していた。そこまで到達できなかったため「HEY REPORTER!」は,深みに欠けるものになった。

そして,ラストの「YOUR EYES」は美しいメロディの傑作だが,残念ながら歌詞が英語だ。全曲日本語で通してほしかった。日本語か英語については,彼はあまり深く考えていないのか,他のアルバムでも普通に英語詞曲を収録する。これも私にとっては大きなマイナス・ポイントなのだ。気にならない人にとってはどうでもいいことだろうが。日本語でロックすることに重要な意義を感じる私のようなものには,どっこい,そうはいかないのだ。

こうした点を考慮すると,私の考える彼の代表作は『RIDE ON TIME』ということになる。しかし,本当のことを言うと,彼の最高傑作は,『トレジャーズ』ではないだろうか。シングル曲中心のベスト盤である。つまり,彼の本領はシングル曲にあるのではないだろうか。アルバム・アーティストというよりも,シングル・アーティストとしてのほうに,彼の最良の部分が表れていると私は考える。異論もあるだろう。シングル以外のアルバム曲に名曲が多数含まれているのも事実だ。しかし,それを承知でなぜ敢えて私がこう言うのか,それは,彼の師匠大滝詠一における『ロング・バケーション』のような決定的なアルバムを山下達郎はまだ作れていない,と考えるからだ。それゆえ,アルバムよりも彼のシングルの価値の高さをここで強調しておきたい。その意味で『グレイテスト・ヒッツ・オブ・山下達郎』も重要作である。

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