[No.769]『シング・ストリート 未来へのうた』/ジョン・カーニー監督('15)

実に清々しい音楽映画を観た。舞台は1985年のアイルランド,ダブリン。主人公はロック・ミュージシャンのプロモーションビデオに夢中な高校生,コナー。父親の失業に伴い荒れた学校に転校すると,学校の近くでラフィーナという女の子に一目惚れ。彼女を口説く文句が「僕のバンドのプロモーションビデオに出ない?」。バンドすらできていないのに,コナーはどうする? といったオープニングだ。

バンド・メンバーを急遽集め,曲作りを始めるコナー。ここでロックに詳しい兄が,曲を作るならこれを聴け,といった具合に様々なレコードをコナーに渡す。ザ・ジャム,ジョー・ジャクソン,ザ・キュアーなどなど。コナーはラフィーナとの出会いの中から曲のモチーフを見つけ曲を書いていく。兄が勧める度に,そのアーティストに感化された曲を書き,コスチュームを真似するコナーとバンド・メンバーが笑える。

曲作りをしよう,とギタリストを誘い,彼の部屋で,或いは屋外でレノン/マッカートニーよろしく,2人で曲を作る様子がいい。監督は自身もバンド経験があるそうで,この辺りは実体験に基づいているのかもしれない。そして,曲が書けるとまずプロモーションビデオを作る,という流れが面白い。それはラフィーナを誘う口実ではあるのだが,ライヴよりPVが先という感覚はいかにも80年代的。

コナーの両親が離婚の危機にあり,家庭内がガタガタという描写が多いが,普通の高校生ならば実家から通学しているわけで,親との関わりは外せないのは確かだ。もちろん,教師との対立というロックらしいテーマもある。それらが決して物語を停滞させていないところは監督の技量だろう。PV制作中に卒業パーティでのライヴ演奏を夢想するシーンがいい。揃いのスーツのバンドのライヴに,両親が仲良く駆け付け,校長が踊り,大学を中退させられくすぶっている兄がバイクで乗り込んでくる。誰もが幸せに音楽を楽しんでいる場面はコナーが望む世界であるが,決して現実には起こりえない。しかし,そこにはつかの間の幸せな瞬間があり,心温まる。

物語は急展開で意外な方向に舵を切る。ラスト・シーンは若者らしい無鉄砲さがよく表れつつ,フェリーニか中平康か,というカットに驚かされる。映画としても上等だが,使われている音楽,そして,いかにも80年代に書かれそうなコナーのオリジナル曲が十分に楽しめる。いいものを観た,という満足感を味わえるロック映画だ。





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この記事へのコメント

2016年11月12日 21:04
10日に退院。また、ブログ再開しました。この映画おもしろそうですね。ちょっと【コミットメンツ】に似た設定ですが・・・。
2016年11月19日 11:07
『コミットメンツ』のようにバンド内の男女関係や脱退などの内幕ものではないところが,新鮮でした。80年代らしさとも言えます。

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