[No.729]『パンチ・ザ・クロック』/エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズ('83)
Punch The Clock/Elvis Costello & The Attractions('83)
アトランティック・ソウルのレコーディング現場にポップ・シンガー,コステロが迷い込んだとでもいうべきアルバム。ソウル・バンドをバックに,とにかくいいメロディを歌うというコンセプトが楽しい。そのためのTKOホーンズの参加であり,R&B趣味を生かしたアレンジである。しかし,もろにブラック・ミュージック一辺倒にならないポップ・センスが,エルヴィス・コステロのコステロたる所以である。
この時期のコステロはとにかくメロディがいい。近年のようにあれこれとこねくり回すようなことろがなく,メロディ・ラインが短くシンプルだ。一聴して耳に残るキャッチーさも随一だ。同じR&B路線の『ゲット・ハッピー!!』のような書き飛ばし感がない。あれはあれで魅力的だったが,やはりパンク,ニュー・ウェーヴのあおりを食った感は否めない。それに対して,『パンチ・ザ・クロック』は曲作りが実に自然で,彼のメロディ・メイカーとしての良さが十分に発揮されている。
このサウンドを支えたジ・アトラクションズの演奏も見事だ。いつものオルガンでのプレイを抑えてピアノをメインにしたスティーヴ・ナイーヴの演奏の貢献度は高い。コステロのギターがほとんど目立たない中で,適宜リード・ベース的な演奏を聴かせるブルース・トーマスもいい。ピート・トーマスは自身のキャリアに応じて硬軟取り混ぜてのドラム・スタイルでさすがのバッキングだ。初期アトラクションズの疾走感はないが,溌剌とした演奏は変わらずだ。
ポップ度合いが高い本作にあって,冷静さを取り戻す楔の役割を担っているのが,「シップビルディング」「ピルズ・アンド・ソープ」の2曲。それぞれアナログ盤のA面ラストと,B面ラストひとつ前に位置し,アルバム全体を引き締めている。ただ,明るいだけのアルバムではないと控えめに主張する2曲だ。この2曲がなければアルバムの完成度は下がったことだろう。
本作はレンタル・レコード店でリアルタイムで借りてカセットテープに録音して何度も繰り返し聴いた。また,当時NHK-FMサウンドストリートでは,渋谷陽一がコステロ,ニック・ロウ,グラハム・パーカー,イアン・デューリーなどパブ・ロック出身アーティストを贔屓にしていたのでよくかかった。その結果,コステロの書くメロディ・ラインにすっかり魅了されてしまった。本作には彼の優れたメロディ・メーカーとしての資質がいかんなく発揮されている。「エヴリデイ・アイ・ライ・ザ・ブック」が全米36位というヒットを記録したのもうなずける。
アトランティック・ソウルのレコーディング現場にポップ・シンガー,コステロが迷い込んだとでもいうべきアルバム。ソウル・バンドをバックに,とにかくいいメロディを歌うというコンセプトが楽しい。そのためのTKOホーンズの参加であり,R&B趣味を生かしたアレンジである。しかし,もろにブラック・ミュージック一辺倒にならないポップ・センスが,エルヴィス・コステロのコステロたる所以である。
この時期のコステロはとにかくメロディがいい。近年のようにあれこれとこねくり回すようなことろがなく,メロディ・ラインが短くシンプルだ。一聴して耳に残るキャッチーさも随一だ。同じR&B路線の『ゲット・ハッピー!!』のような書き飛ばし感がない。あれはあれで魅力的だったが,やはりパンク,ニュー・ウェーヴのあおりを食った感は否めない。それに対して,『パンチ・ザ・クロック』は曲作りが実に自然で,彼のメロディ・メイカーとしての良さが十分に発揮されている。
このサウンドを支えたジ・アトラクションズの演奏も見事だ。いつものオルガンでのプレイを抑えてピアノをメインにしたスティーヴ・ナイーヴの演奏の貢献度は高い。コステロのギターがほとんど目立たない中で,適宜リード・ベース的な演奏を聴かせるブルース・トーマスもいい。ピート・トーマスは自身のキャリアに応じて硬軟取り混ぜてのドラム・スタイルでさすがのバッキングだ。初期アトラクションズの疾走感はないが,溌剌とした演奏は変わらずだ。
ポップ度合いが高い本作にあって,冷静さを取り戻す楔の役割を担っているのが,「シップビルディング」「ピルズ・アンド・ソープ」の2曲。それぞれアナログ盤のA面ラストと,B面ラストひとつ前に位置し,アルバム全体を引き締めている。ただ,明るいだけのアルバムではないと控えめに主張する2曲だ。この2曲がなければアルバムの完成度は下がったことだろう。
本作はレンタル・レコード店でリアルタイムで借りてカセットテープに録音して何度も繰り返し聴いた。また,当時NHK-FMサウンドストリートでは,渋谷陽一がコステロ,ニック・ロウ,グラハム・パーカー,イアン・デューリーなどパブ・ロック出身アーティストを贔屓にしていたのでよくかかった。その結果,コステロの書くメロディ・ラインにすっかり魅了されてしまった。本作には彼の優れたメロディ・メーカーとしての資質がいかんなく発揮されている。「エヴリデイ・アイ・ライ・ザ・ブック」が全米36位というヒットを記録したのもうなずける。
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