[No.724]『クライシス』/マイク・オールドフィールド('83)

Crises/Mike Oldfield('83)
マイク・オールドフィールドが見事に80年代を乗り切り,なおかつビッグ・ヒットを記録した傑作。特にシングル曲「ムーンライト・シャドウ」はヨーロッパ11ケ国でナンバー・ワン・ヒットという快挙を成し遂げた。アルバムも全英6位,ドイツ,スウェーデンでは1位を記録した。本作がそれほどまでに受け入れられた理由は何なのだろう。それは大作『チューブラ・ベルズ』からの脱却である。

マイク・オールドフィールドと言えば『チューブラ・ベルズ』。80年代に入っても彼の代表作は,相変わらず1973年発表の『チューブラ・ベルズ』であった。それは,マイク・オールドフィールドというアーティストが,一人多重録音の偏執狂で,1曲で20数分を要するプログレのアルバム・アーティストであることを意味した。時代はシングル・ヒット主体の80年代,多くのプログレ・バンドはどう生き残るべきかを模索した。コンパクトな楽曲で売れ線狙いとならざるを得ない状況で,イエスジェネシスもあるいは新バンド・エイジアを結成したミュージシャンたちなど,多くのプログレ・アーティストがその道を選択した。マイク・オールドフィールドもまた,その路線に乗った。しかし,やや違う形で。

まずアナログA面は相変わらずの大曲「クライシス」で20分を超える。これなら以前のプログレそのままなのだが,問題はドラマーの加入だ。歴戦の強者,サイモン・フィリップスのドラムを得て,パワフルでスピード感のあるロックな20数分が形作られた。曲は長いが難解ではない。スピーディーでどんどん展開していくサウンドは,一気に聴ける。プログレ受難の時期を乗り切るため,アルバム全体にわたって参加しているサイモン・フィリップスの貢献度は非常に高いといえる。

そしてB面,一転してコンパクトな楽曲が5曲並ぶ構成だ。中でも何といっても「ムーンライト・シャドウ」の美しさ,軽やかさ,華麗さは多くのリスナーにアピールしたであろう。これらB面曲は,他アーティストにヴォーカルを任せたというのもヒットの要因だ。「ムーンライト・シャドウ」マギー・ライリー「イン・ハイ・プレイセス」ジョン・アンダーソン(イエス)「シャドウ・オン・ザ・ウォール」ロジャー・チャップマン(元ファミリー)と,曲調に合わせて適材適所というべき起用だ。

単純にポップ化すればよい,という発想ではなく,いかにもマイク・オールドフィールドならではのスタンスで80年代に向かい合ったアルバム,それが『クライシス』である。彼なりに時代に向き合った結果は,『チューブラ・ベルズ』の人という印象を大きく転換させ,ヒットをも生む大成功を収めたのだ。

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この記事へのコメント

2015年09月15日 01:48
大好きなアルバムです。好きすぎてCDで持っているにもかかわらず、最近になってアナログ盤もゲットしました。さっそくジャケットを壁にかざっています。美しすぎる!!
2015年09月15日 21:10
そこまでお気に入りだとは。マイク・オールドフィールドはなかなかアルバムを集められずにいます。どうしても長い曲が気になって。本作のようなアプローチは,一リスナーとしては大変助かるものです。

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