[No.326]空とぶ・ウララカ・サイダー/大瀧詠一とココナツ・バンク('73)

『1973 9 21 SHOWBOAT 素晴らしき船出』というアルバムをやっと入手したので、「CITY-Last Time Around」というイベントの当日の流れが分かってきた。なかなか見つからず探していた一枚だっただけに嬉しいものだ。
このイベントは、はっぴいえんどの解散コンサート兼メンバーが関わっていたアーティストのお披露目ライヴとして企画されたらしい。『ライヴ!! はっぴいえんど』というタイトルのアルバムと併せて、出演順に並び替えて聴いてみた。
第一部の最初が当時新人だった南佳孝、ソロでデビューした吉田美奈子のステージ。二人のステージそれぞれにストリングスがバックについている。どちらもアコースティック感の強い、自身の世界全開の興味深いライヴだ。次が西岡恭蔵で当時細野晴臣がアルバムをプロデュースしていた縁で出演したようだ。第一部の最後が伊藤銀次率いるごまのはえ改めココナツ・バンク。これがファンキーな演奏でかっこいい。
第2部に入ると、はっぴいえんどのメンバーが当時どんな方向に向かっていたかが分かる構成になっている。最初が大瀧詠一のポップス路線。バック・バンドがココナツ・バンクシュガー・ベイブのコーラスという正にナイアガラ・サウンドのスタートの演奏だ。観客は大喜びだったらしい。次が松本隆率いるムーンライダースはちみつぱい初期のメンバーだった山本浩美鈴木博文も加わった演奏は、黒人音楽への憧れを込めたソウルフルなもの。このムーンライダースはすぐに解散してしまい、鈴木慶一ムーンライダースとはイコールではない。そして第2部の最後が細野晴臣、鈴木茂キャラメル・ママだったのだが、これだけ音源が収録されていない。非常に残念だ。
第3部がはっぴえんどのステージ。解散コンサートとうたわれているが、実際にはとっくに解散していたのでこの時が再結成みたいなものだった。ファンキーに生まれ変わった「はいからはくち」を聴いてみても、当時のメンバーの志向がブラック・ミュージックに向いていたことは明らかだ。ムーンライダース、キャラメル・ママはもちろん、大瀧詠一のCM作品もリズムに重きを置いた方向を打ち出していた。
演奏の通り、順番に聴いて初めて全体の流れをつかむことができた。といっても全曲を聴くことができたわけではないのが残念なのだが、それはともかく新しい世代の新鮮な感覚、はっぴいえんどのメンバーが新機軸を打ち出そうとする明確な意志を確認できた。イベントのタイトルにあるとおり、「CITY」(都市)に住む者のための音楽という括り方も確かに可能だ。
全部を聴いて一番インパクトを感じたのは大瀧詠一「空とぶ・ウララカ・サイダー」だった。「サイダー'73」で始まり、途中に「ウララカ」を挟み、ビートルズ的サウンドを初めて示した「空とぶくじら」が現れ、また「サイダー'73」に戻るメドレー形式の一曲だ。メドレーにしたことで逆に強い印象を与えることに成功している。見事な戦略だ。
この時の大瀧詠一は、自分のやりたい音楽を追究しようと、きっと希望に燃えて最高のステージを繰り広げたのではないだろうか。この後ナイアガラ・レーベルを立ち上げたところまでは良かったのだが、それから先は実に暗い数年間が待っているとはつゆ知らず、ある種の無邪気さすら感じさせるとても楽しいステージだったのだろう。
この間の朝日新聞の記事では依頼があれば新曲を作る用意はあるが依頼がない、という意味の発言をしていた。それ以前に自分はベンチにいる王貞治のようなもので、今現役でプレイできるものではないという状態だと、完全な隠居宣言をしていた。もはや彼に新しい何かを期待するものではないのだなあ、と再確認した次第。そんな大瀧詠一の最高の瞬間の一つが、この一曲に収められている。

ライヴ!!はっぴぃえんど
キングレコード
2000-02-04
はっぴいえんど

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